外国人労働者が帰国・退職するときの注意点|企業と本人のチェックリスト完全版

目次

この記事のポイント

  • 退職・帰国時は「在留」「税金」「社会保険」「住居・ライフライン」「書類発行」を時系列で整理すると漏れが防げます。
  • 企業側には法定届出(在留関連・雇用保険・社保等)と原本交付(源泉徴収票・退職証明)が必須。
  • 本人側は住民税の精算年金の脱退一時金住居・通信の解約銀行口座・SIMなどの実務を早めに着手。

まずは全体像(役割分担)

  • 企業がやること:契約終了の説明、各種届出、最終賃金精算、書類交付、支援計画に基づく帰国支援(特定技能1号等の場合)。
  • 本人がやること:市区町村・税金手続き、年金・保険の清算、住居・ライフライン解約、口座・SIM整理、出国時の在留カード返納。

タイムラインで進める(目安)

T–30〜14日:退職・帰国の基本合意

  • 退職日・最終出勤日・帰国日(フライト)を確定。
  • 在留期限の確認(オーバーステイ防止)。再入国予定がある場合はみなし再入国許可の利用可否も確認。
  • 最終賃金の見込試算(基本給・残業・有給買取・控除)。
  • 住民税の精算方法を本人と合意
    • 退職時一括天引き、または納税管理人の選任(帰国後の納付窓口)を市区町村に届出。
  • 住居の退去日・原状回復の範囲、敷金精算の流れを決定。

T–14〜7日:実務の準備

  • 会社→出入国在留管理庁への届出(雇用終了の届出・14日以内目安)。
  • 雇用保険・社会保険の資格喪失手続き準備、健康保険証の回収予定を共有。
  • 各種書類のドラフト
    • 源泉徴収票(年内退職なら年末調整扱い有無も確認)
    • 退職証明書/在職証明書
    • 離職票(日本で失業給付を受けない場合は不要だが、本人の希望を確認)
  • 年金「脱退一時金」案内(対象者):申請方法・必要書類・振込先。
  • 住居・電気・ガス・水道・ネット・携帯の解約予約、最終検針/立会い日を設定。
  • 銀行口座・クレカ:解約か維持か(返金受取・脱退一時金の受け皿に使う場合は維持)。

T–7〜1日:最終確認

  • 最終給与の確定(未払い残業・有給買取・立替金清算)。
  • 保険証の返却・社会保険資格喪失手続き実行。
  • 社有物の返却(制服、ICカード、備品、機密物の廃棄確認)。
  • 退去立会い・鍵返却・敷金清算書の受領
  • SIM解約/MNP、二段階認証の電話番号更新(業務アカウントを含む)。
  • 緊急連絡先・連絡チャネル(メール等)を相互に確認。

出国当日〜出国時

  • 空港で在留カード返納(出国審査時に提示・返納)。
  • みなし再入国で再入国予定がある場合は有効期限内か必ず確認。
  • フライト遅延等の緊急対応ルートを共有。

企業側:必ずやるべき届出と交付書類

法定・公的手続き

  • 出入国在留管理庁:雇用終了の届出(特定技能・技人国等:概ね14日以内が目安)。
  • 社会保険:健康保険・厚生年金の資格喪失(退職翌日付)。保険証回収・返納。
  • 雇用保険:資格喪失届。離職票は本人希望により交付。
  • 住民税:最終給与での一括徴収実施、または納税管理人の届出をサポート。

交付すべき書類

  • 源泉徴収票(年内の所得・控除を反映)
  • 退職証明書/在職証明書(帰国後の就職・手続きで利用されることあり)
  • 離職票(本人希望時)
  • 就労・評価レター(希望があれば英語版なども。次職の信用に役立つ)

特定技能(1号)の場合の支援(登録支援機関または企業)

  • 帰国旅費の扱い帰国前の生活オリエンテーション行政手続き案内など、支援計画に沿った実施記録を残す。

本人側:日本で済ませる重要手続き

税・社会保険・年金

  • 住民税:退職時一括清算 or 納税管理人の届出(市区町村)。
  • 年金の脱退一時金(条件該当者)
    • 日本出国後に申請。日本国内の振込先があるとスムーズ。
    • 過去の加入期間・等級により支給額が変動。
  • 国民年金・国保に切替中の人は資格喪失手続きを忘れずに。

住居・生活インフラ

  • 賃貸退去・原状回復・敷金清算、退去立会い
  • 電気・ガス・水道・ネット・NHK等の解約と最終清算。
  • 携帯電話・プリペイドSIMの解約/残債清算。
  • 銀行口座:解約するか維持するか決める(返金・年金一時金の受取先)。
  • **My番号(個人番号)**は返納不要だが、カード(マイナンバーカード)の取扱いは自治体の案内に従う。

仕事・デジタル衛生

  • 社内アカウントの権限解除、私物データの回収、会社データの削除・返却。
  • NDA・機密保持義務の再確認(退職後も有効)。

よくあるトラブルと防止策

1)最終給与が「思ったより少ない」

  • 控除の内訳(住民税・社保・寮費・立替金)を事前に共有。
  • 想定手取りシート(和英+数値)の読み合わせでミスコミュニケーションを防止。

2)住民税の未納通知が帰国後に届く

  • 退職時に一括徴収するか、必ず納税管理人を設定。
  • 会社は本人宛の郵送先(国内の友人・管理人)を確認。

3)年金の脱退一時金が受け取れない

  • 申請書類・振込先を出国前に整える。
  • 口座解約前に入金スケジュールを確認。必要なら海外送金手段を準備。

4)在留カード返納忘れ/再入国トラブル

  • 出国当日の空港返納を周知。
  • 再来日予定がある場合はみなし再入国許可の期限を必ず確認。

企業・本人それぞれの最終チェックリスト(コピペOK)

企業

  • ✅ 雇用終了の入管届出済
  • ✅ 社保・雇保の資格喪失、保険証回収
  • ✅ 源泉徴収票・退職証明・(希望あれば)離職票を交付
  • ✅ 最終給与内訳を多言語で説明(想定手取り=総支給-控除)
  • ✅ 寮・備品・ICカード等の返却完了
  • ✅ 特定技能の支援計画:帰国支援の実施記録完了

本人

  • ✅ 住民税:一括清算 or 納税管理人届出
  • ✅ 年金:脱退一時金の案内・口座確認
  • ✅ 住居・電気・ガス・水道・ネット解約、敷金清算
  • ✅ 携帯・銀行・クレカの整理
  • ✅ 在留カード:出国時に空港で返納
  • ✅ 必要書類(源泉徴収票・退職証明・評価レター)を受領

まとめ

帰国・退職時の“つまずき”は、税・社保の精算在留カード返納、そして書類の受け渡しに集中します。タイムラインで前倒しに準備し、可視化されたチェックリストで運用すれば、トラブルは大きく減らせます。特定技能など支援義務のある在留資格では、計画書どおりの帰国支援まで丁寧に。

目次