宿泊業だと「特定技能ビザ」と「技術・人文知識・国際業務ビザ」どちらが良い?

ホテル・旅館の採用現場で迷いやすいのが、在留資格(ビザ)をどちらで設計するかです。結論から言うと、マルチに現場オペレーションを担うなら「特定技能(宿泊)」、専門性・企画/国際業務を担うなら「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」が基本の目安です。2025年現在、宿泊分野は特定技能2号まで運用されており、熟練人材の長期活躍も制度上は可能になっています。


目次

1. 担える業務のちがい(宿泊業)

項目特定技能(宿泊)技術・人文知識・国際業務(技人国)
想定業務フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービス全般。業務は幅広く、現場の複数タスクに従事。ベッドメイク・清掃など付随的作業を含む運用も可。人文・国際領域の専門性を要する業務(例:海外向け企画/広報、マーケ、通訳・翻訳、外国語を要するゲストリレーション等)。単純作業や清掃等は不可
現場適合オペレーションの人手不足補完に最適。シフトでの配膳・下膳、チェックイン補助、館内案内など現場回しに強い。フロントでも外国語/国際業務の比重が高い場合に適合。小規模宿で雑務が多いと不許可リスク。

2. 採用要件・在留のちがい

項目特定技能1号(宿泊)特定技能2号(宿泊)技人国
技能・語学宿泊分野の技能試験+日本語(JFT-Basic/JLPT等)。宿泊2号評価試験等+相応の実務経験(監督/指導レベル)。大学/専門等の学歴や実務経験で専門性を証明。
在留期間通算上限5年(更新制)。上限なし(更新可)。家族帯同も条件により可。更新可(職務内容が専門性要件を満たすこと)。
家族帯同原則不可。要件を満たせば可可(要件あり)。
受入れ体制日本人と同等以上の処遇、支援体制、分野運用要領に沿った受入条件(協議会等)を整備。1号と比べ支援義務は緩和だが、要件は運用方針に従う。支援義務なし。職務の専門性適合が審査の核心。

※ 宿泊分野の詳細要件や受入れ条件は、国交省(観光庁)の分野別運用方針/要領と出入管庁の告示・運用資料を必ず最新で確認してください(2025/6/27更新)。


3. 宿泊業の「あるある」ケース別アドバイス

ケースA:フロント中心だけど、配膳や客室対応も手伝ってほしい

  • 特定技能(宿泊)向き。現場の複数タスクを回す体制に合う。仕事内容とシフト票に複数業務の割合を明記し、付随業務の範囲を可視化。

ケースB:海外OTA対応、英語/中国語でのCS、海外SNS運用が主務

  • 技人国向き。言語・企画・国際業務の専門性を要件化。清掃等の単純作業は職務から切り離す(混在は不許可リスク)。

ケースC:将来は現場のリーダー・教育役に

  • 特定技能1号 → 2号へのキャリア設計。2号は指導・監督を想定し、長期雇用と家族帯同も視野に。人事制度に昇格要件(評価試験、指導経験年数等)を明文化。

4. 申請設計のチェックリスト(コピペ可)

  • □ 求人票・雇用契約・職務記述書(JD)に業務範囲と割合を明記(特に特定技能)。
  • □ 技人国の場合、専門性の根拠(学歴/職歴、業務の専門性、語学要件)を資料化。
  • □ 宿泊分野の運用方針/要領の最新版を確認(受入要件、支援、協議会等)。
  • □ 特定技能の評価試験(1号/2号)と日本語要件の充足を確認。
  • □ シフト・変形労働・割増賃金・寮費/控除等を契約書と別紙で明確化(手取り額の目安も)。

5. よくあるつまずき

  • つまずき1:フロント採用(技人国)なのに、清掃・配膳を常態化 → 不許可/更新リスク
  • つまずき2:特定技能で「単一業務」しかさせない/逆に清掃ばかり → 業務設計の不適合
  • つまずき3:運用要領(宿泊)の受入条件や支援体制が未整備 → 申請差戻し

6. まとめ|現場は「特定技能」、企画・国際は「技人国」+2号で長期活用

宿泊業の人手不足を補う現場即戦力には「特定技能(宿泊)」が合い、企画・国際/言語の専門職には「技人国」がフィットします。2025年は宿泊の特定技能2号も運用中。1号→2号のキャリアで、現場の核となる外国人材を長期登用する道も整いつつあります。制度は改正が続くため、最新の公的資料の確認を必ず行いましょう。

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