技能実習から特定技能への切り替えで気をつけること

〜分野の誤解がもっとも多いポイントを中心に解説〜**

技能実習から特定技能への移行はスムーズに見える一方で、
「そもそも特定技能のどの分野に移行できるのか?」
という点で多くの企業・実習生・支援機関がつまずきます。

特に注意が必要なのが、
“同じように見える仕事内容でも、対象分野がまったく違う”
というケースです。

本記事では、代表的な事例を挙げながら、技能実習から特定技能へ切り替える際に注意すべきポイントをわかりやすく整理します。


1. 「業務内容が似ている=切り替えできる」は大きな誤解

技能実習 → 特定技能は
技能実習の職種・作業に応じて、基本的に切り替え可能な特定技能分野が決まっています。

ところが、実際の現場では仕事内容が近いので「できそう」と思われてしまうパターンが非常に多いのです。


2. 代表例:塗装はOKだが、板金塗装はNGになる理由

目次

✔ **技能実習(塗装) → 特定技能(建設/造船)

→ 切り替え可能**

  • 塗装は「建設」や「造船・船用工業」の特定技能分野で認められている
  • そのため技能実習(塗装作業)を修了していれば、試験なしで特定技能に移行できる場合がある

✖ **技能実習(板金塗装) → 特定技能(建設・造船)

→ 切り替え不可**

理由は簡単で、
板金塗装=自動車整備の一部
と見なされるためです。

特定技能の「自動車整備」分野は存在しますが、
特定技能としての業務範囲は以下の特徴があります:

  • 車体整備の一部は対象外
  • 塗装・外装補修など“ボディリペア中心の作業”は適合しない

つまり、板金塗装は特定技能で認められていない作業が多く、移行自体が不可となります。


3. 分野がズレていると起きるトラブル(実際に多い)

在留申請が不許可になる

分野が適合していないと、どれだけ働ける能力があっても不許可。

求人票と実際の業務がズレてしまう

企業側も分野を誤解していると、雇用契約が不整合に。
(→ 監査で指摘される)

実習生本人が進路を誤解してしまう

「うちで働き続けられると思ったのに…」というトラブルも多い。


4. その他、勘違いが多い“切り替え不可”パターン

以下は現場でよく起きる誤解ポイントです。


技能実習:介護補助 → 特定技能:介護

→ 移行不可
「介護補助」は技能実習の正式分野ではないため、
特定技能:介護の移行対象ではない。


技能実習:溶接 → 特定技能:自動車整備

→ 全く別分野


技能実習:食品加工 → 特定技能:外食

→ 調理・接客の経験は適合しない


技能実習:機械加工 → 特定技能:電気電子情報

→ 作業内容が異なるためNG


5. 切り替えを成功させるためのチェックリスト

企業・受入れ機関がまず確認すべきは以下の5点です。

✔ ① 技能実習の「職種・作業」が何だったか

→ 名称ではなく“作業内容”が重要。

✔ ② 特定技能の分野に、その作業が含まれているか

→ 業種が似ていても、別分野の可能性がある。

✔ ③ 実際に企業が求める作業が特定技能の業務範囲と一致しているか

→ 求人内容と実務内容がズレるケースが非常に多い。

✔ ④ 特定技能に必要な試験の有無

→ 移行要件を満たさないと受けられない。

✔ ⑤ 移行後のキャリアプランを本人と共有

→ 特に介護・建設・造船は長期キャリアが組める。


6. まとめ:分野の理解が最重要。間違うと不許可になる

技能実習から特定技能への切り替えは、
「どの分野に移行できるか」
を正しく理解していないと、申請不許可や雇用トラブルにつながります。

今回紹介したように、

  • 塗装 → 建設・造船はOK
  • 板金塗装 → 建設・造船はNG(自動車整備扱い)
    というように、
    同じ“塗る作業”でも意味が全く違う
    ということを知っておくべきです。
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